災害時に家族と連絡を取るため、平時に決めておくこと
# 災害時に家族と連絡を取るため、平時に決めておくこと
災害が起きた直後、多くの人がまず考えるのは家族の安否だろう。しかし、大規模な地震や水害などでは、普段と同じように電話やメッセージを使えるとは限らない。通信設備そのものが被害を受けることもあれば、多数の人が一斉に連絡しようとして通信が混雑することもある。
そのため、災害時の家族連絡では「どうすれば電話がつながるか」だけを考えるのでは不十分である。重要なのは、**連絡できない場合でも家族がそれぞれ安全に行動できる仕組みを、平時に決めておくこと**だ。
## 最初に決めるのは「連絡方法」より行動方針
家族の防災計画というと、電話番号や連絡アプリの確認から始めたくなる。しかし、本当に重要なのは「連絡が取れなかったらどうするか」である。
災害時には、家族が自宅、学校、職場、買い物先など別々の場所にいる可能性がある。その状態で連絡が取れなくなると、「家族を探しに行かなければ」と考えて移動を始めてしまうことがある。
しかし、大規模災害の直後には、火災、落下物、倒壊した建物、浸水、道路の寸断など、新たな危険が発生している可能性がある。家族を心配して無理に移動することが、かえって危険につながる場合もある。
そこで、平時から基本方針を共有しておく。
たとえば、
- まず自分がいる場所で安全を確保する
- 学校や職場では、その施設の避難方針に従う
- 危険な状況で無理に自宅へ戻ろうとしない
- 連絡できなくても、あらかじめ決めた行動方針に従う
といった考え方である。
「連絡が取れない=家族が危険」というわけではない。連絡できなくても、それぞれが安全な場所で行動できている状態をつくることが、家族防災の基本になる。
## 集合場所は一つだけでなく複数考える
家族が離れた場所にいる場合に備えて、集合場所を決めておくことも有効である。ただし、「災害が起きたら必ず○○公園へ集合」と一つの場所だけを指定する方法には注意が必要だ。
その場所自体が危険になる可能性があるからである。
洪水、津波、土砂災害、火災などでは、安全な場所は災害の種類によって変わる。また、道路や橋が通れず、集合場所へ移動できないこともある。
そこで、集合場所には優先順位をつけておくとよい。
たとえば、
1. 自宅が安全なら自宅
2. 自宅が危険なら地域で指定されている避難先
3. そこへ行けない場合の別の候補
という形で考える。
実際の避難先や避難経路は地域によって異なるため、自治体が公開しているハザードマップや避難情報を確認して決める必要がある。
特に水害や津波では、「家族と合流するために低い場所へ戻る」という行動が危険になる場合がある。集合そのものより、その時点での安全確保を優先するという原則も家族で共有しておきたい。
## 連絡手段を一つに限定しない
日常では、家族との連絡を電話や特定のメッセージアプリだけに頼っている家庭も多い。しかし、災害時の連絡方法として一つだけを指定すると、その方法が利用できなくなったときに困る。
連絡方法は複数準備しておく。
たとえば、
- 携帯電話の通話
- SMS
- インターネットを利用するメッセージサービス
- 電子メール
- 災害用伝言サービス
- 離れた地域に住む親族や知人を経由した連絡
などが候補になる。
通信障害の状況によって、使える手段と使えない手段は変わる。音声通話が難しくても短いメッセージを送れることがあれば、反対にインターネット接続が利用できないこともある。
「このサービスなら必ず使える」と考えるのではなく、複数の経路を持つことが重要である。
## 災害用伝言サービスの使い方を確認しておく
大規模災害時には、通信事業者などによって災害用の伝言サービスが提供されることがある。
代表的な仕組みでは、電話番号などを手掛かりとして安否に関する伝言を登録し、家族が後からその内容を確認する。音声を利用するものや、インターネット上で文字情報を登録するものなどがある。
ここで重要なのは、サービス名を知っているだけで安心しないことである。
実際に利用するときには、
- どの電話番号を基準に登録するのか
- 誰が伝言を残すのか
- 家族はどの番号を検索するのか
- どの程度の内容を伝えるのか
を決めておく必要がある。
サービスの利用条件や操作方法は変更される可能性があるため、最新の内容は通信事業者や公的機関の案内で確認したい。体験利用の機会が提供されている場合には、平時に家族で試しておくと、本番で初めて操作するより理解しやすい。
## 伝える内容をあらかじめ決める
通信できる時間が限られている場合、長い会話をしようとする必要はない。
家族が知りたいのは主に、
「無事か」
「どこにいるか」
「これからどうするか」
である。
たとえば、
「無事。○○学校に避難中。今日はここにいる」
のように、短い情報でも状況はかなり伝わる。
反対に、「家はどうなった」「いつ帰れる」「誰か見てきて」など多くのことを一度に確認しようとすると、通信が途切れたときに肝心の安否情報を伝えられない可能性がある。
まず安否と居場所を伝え、その後の情報は通信状況が落ち着いてからやり取りするという順序を家族で共有しておくとよい。
## 離れた地域の連絡役を決める方法もある
同じ地域に住む家族同士では、全員が同じ災害の影響を受けることがある。
そこで、遠方に住む親族や信頼できる知人を「連絡役」に決めておく方法もある。
たとえば、家族それぞれが遠方の親族へ、
「私は無事。○○にいる」
と伝え、その親族が情報をまとめる。
ただし、この方法も必ず機能するとは限らない。通信状況や相手の事情によって連絡できない場合があるため、災害用伝言サービスなど別の手段と組み合わせる方がよい。
また、連絡役にする人には事前に相談し、家族の誰から連絡が来る可能性があるのかを共有しておく。
## 子どもや高齢者とは特に具体的に決める
「災害が起きたら連絡して」という約束だけでは、子どもには判断が難しい場合がある。
もっと具体的に、
「学校にいるときは先生の指示に従う」
「一人で家まで歩いて帰らない」
「連絡できなくても決めた場所で待つ」
といった行動まで共有した方がよい。
高齢者についても、携帯電話や伝言サービスの複雑な操作を前提にすると、実際には使えない可能性がある。普段使っている連絡方法を中心にしつつ、近隣の支援体制や自治体の仕組みなども確認する。
家族全員に同じ方法を押しつけるのではなく、それぞれが現実に使える方法を組み合わせることが大切である。
## 電話番号はスマートフォン以外にも残しておく
スマートフォンに登録してある電話番号は、普段は覚えていなくても困らない。しかし、端末の故障、紛失、電池切れなどが起これば確認できなくなる。
家族や連絡役の電話番号は、紙にも書いて持っておくとよい。
防災用品の中だけでなく、財布や通勤・通学用のバッグなど、普段持ち歩くものに小さな連絡カードを入れておく方法もある。
子どものカードには、必要に応じて保護者の連絡先を記載する。ただし、氏名、住所、勤務先など個人情報を過剰に記載すると紛失時の問題もあるため、持たせる情報の範囲は家庭ごとに検討する必要がある。
## 情報源もあらかじめ決めておく
家族間の連絡だけでなく、「どの情報を信頼するか」も決めておきたい。
災害時にはSNSなどで大量の情報が流れるが、すべてが正しいとは限らない。古い情報や別地域の情報が再拡散されることもある。
避難の判断に関わる情報では、気象機関、自治体、消防、警察など公的機関が発表する情報を優先して確認する。
特に地域によって、
- 避難場所
- 避難所
- 危険区域
- 情報配信方法
- 防災メールなどの登録制度
は異なる。
「災害が起きてから検索する」のではなく、平時に自分の地域の公式情報源を確認し、必要なサービスがあれば登録しておく。
## 家族会議は一度決めて終わりにしない
災害時の連絡計画は、一度作れば永久に使えるものではない。
転居、転職、進学、スマートフォンの変更、家族構成の変化などによって、集合場所や連絡先は変わる。
定期的に、
- 家族の電話番号
- 緊急連絡先
- 集合場所
- 避難先
- 災害用伝言サービスの使い方
- 地域の公式情報源
を確認しておく。
防災用品を点検するときに、一緒に連絡方法を確認する習慣にしてもよい。
重要なのは、完璧な連絡網を作ることではない。災害の規模や被害状況によっては、どの通信手段も一時的に利用できない可能性がある。
だからこそ、「連絡できなかったらどうするか」まで決めておく。
家族全員が、自分の安全をまず確保し、決めた方法で短い安否情報を残し、連絡できない場合でも事前の方針に従って行動する。その仕組みを平時につくっておくことが、災害時の不安と危険な移動を減らすための現実的な備えになる。