安全な飲み水がないときに取るべき行動
# 安全な飲み水がないときに取るべき行動
## 最初にすることは「水を探す」より安全確認
災害や設備停止で水道が使えなくなると、すぐに水を確保したくなります。しかし、地震、洪水、土砂災害、火災などの直後は、水を取りに行く行動そのものが危険になることがあります。
倒壊しそうな建物へ戻る、冠水した道路を歩く、崖や河川に近づくといった行動は避けます。避難指示などが出ている場合は、水の確保より避難を優先してください。
安全な場所に移動したら、まず次の状況を確認します。
- 自分や周囲にけが人がいないか
- 火災、浸水、倒壊、土砂災害などの危険が続いていないか
- 水道が完全に止まっているのか、それとも「飲用できない状態」なのか
- 手元に未開封の飲料水や備蓄水がどれくらいあるか
- 自治体や水道事業者から給水・水質に関する情報が出ていないか
断水と、水が出るものの飲用できない状態では対応が異なります。見た目が透明でも安全とは限らないため、災害後に水質への注意が呼びかけられているときは自己判断で飲まないことが重要です。
## 自治体と水道事業者の情報を確認する
安全な飲み水を確保できないときは、自分で水を「作る」ことから考えるのではなく、公的な情報を確認することを優先します。
自治体、水道事業者、防災行政無線、避難所、公式Webサイトなどから、断水範囲、応急給水場所、給水時間、水道水の使用制限が案内されることがあります。水質に問題が起きた場合には、飲用を控えるよう案内される場合もあります。
重要なのは、「水道水を飲んではいけない」という情報が出たときに、その理由まで可能な範囲で確認することです。微生物への対策として煮沸が案内される場合と、化学物質などの問題で飲用自体を避けるよう求められる場合では、取るべき行動が違います。
煮沸は多くの病原微生物への対策になりますが、有害な化学物質や毒素を含む水を安全にする方法ではありません。CDCも、化学物質や毒素を含む水は煮沸しても安全にならないとしています。
そのため、自治体などから「飲まないでください」と案内されている水を、「沸かせば大丈夫だろう」と判断するのは避けます。
## 飲料水は安全性を確認しやすいものから使う
飲み水が不足した場合は、安全性を判断しやすい水から順番に検討します。
第一候補になるのは、家庭で備蓄していた未開封の飲料水です。次に、自治体や避難所などから供給される水、流通が機能している地域で購入できる飲料水などを検討します。
災害時の備蓄について、政府は飲料水を1人1日3リットル以上、最低3日分、できれば1週間分準備することを呼びかけています。 これは災害が起きてから無理に確保する量というより、平常時の備えを考える際の目安です。
応急給水を利用する場合は、自治体の指定した給水場所や給水車を利用し、できるだけ清潔な容器で受け取ります。厚生労働省は、給水車からくみ置きした水について、できるだけ当日給水されたものを使うよう案内しています。
給水所が遠い場合でも、危険な道路や立入禁止区域を通ってまで取りに行くべきではありません。安全な経路が確保できない場合は、避難所や周囲の人、自治体などに状況を伝え、支援につなげます。
## 飲める水と生活用水を分けて考える
水が不足すると、「すべての用途に飲料水を使わなければならない」と考えがちですが、用途を分けることで安全な水を残しやすくなります。
安全性を確認できた飲料水は、まず直接飲むために確保します。薬を飲むための水、乳児のミルクなど、安全な水が特に重要な用途についても優先して考えます。
一方、飲用できない水でも、行政などから用途が示されている場合には、トイレなどの生活用水として利用できる可能性があります。ただし、汚染の種類によっては皮膚への接触なども避ける必要があるため、「飲めないなら何にでも使える」とは考えません。
風呂の残り湯なども、飲料水としてではなく生活用水として扱います。
飲料水と生活用水を容器ごとに分け、「飲用」「飲用不可」などと分かるようにしておけば、家族が誤って飲む事故も防ぎやすくなります。
## 川、池、雨水、洪水の水を安易に飲まない
飲料水が少なくなっても、身近にある水がそのまま飲めるとは限りません。
川や池などの水には、微生物だけでなく、災害によって流出した燃料、農薬、生活排水、その他の汚染物質が混入している可能性があります。特に洪水や冠水によってたまった水は、飲料水として利用することを前提にしない方が安全です。
見た目、におい、味だけでは水の安全性を判断できません。
また、簡易的なフィルターで濁りを取っただけでも安全な飲料水になるとは限りません。浄水器にも除去できる物質とできない物質があり、製品によって性能が異なります。
そのため、周囲に自然の水があるという理由だけで、安全な飲み水を確保できたとは考えないことが重要です。
## 煮沸は「どんな水でも飲めるようにする方法」ではない
非常時の水について、よく知られている方法の一つが煮沸です。
煮沸は微生物による危険を減らす方法として有効ですが、万能ではありません。CDCやEPAも、緊急時の水処理として煮沸や消毒方法を紹介する一方、化学物質などによる汚染には別の対応が必要であることを示しています。
したがって、煮沸を検討してよいのは、少なくとも水源や汚染状況から、行政などが煮沸による対応を認めている場合です。
洪水の水、油のようなものが浮いている水、異臭がする水、化学物質による汚染が疑われる水などを、「とりあえず沸かして飲む」という判断は避けます。
井戸についても同様です。厚生労働省は、災害時に井戸水をやむを得ず利用するときには煮沸などによる殺菌に注意するよう案内していますが、これは井戸水に化学的な汚染がないことまで保証するものではありません。
特に洪水や浸水の後は、水源そのものが普段とは異なる状態になっている可能性があります。
## 水が少なくなっても極端な飲み控えはしない
残っている飲料水が少ないと、「できるだけ飲まない方が長く持つ」と考えることがあります。
しかし、必要以上に水分摂取を我慢すれば、体調を崩して行動能力が低下する可能性があります。特に暑い環境、避難中の歩行や作業、発熱や下痢などがある場合には、水分の必要量も変わります。
安全な水が不足してきたら、単に消費量を削り続けるのではなく、早い段階で給水所、避難所、自治体などへつながることが重要です。
高齢者、乳幼児、妊娠中の人、持病のある人、体調を崩している人などがいる場合には、必要な水や支援を早めに確認します。
水を飲めない状態が続く、意識がおかしい、著しくぐったりしているなど明らかな体調異常がある場合は、水の確保だけで解決しようとせず、救急・医療支援につなげてください。
## 孤立しているなら早めに救助を求める
安全な飲み水が手に入らず、給水所や避難所にも移動できない場合は、状況が深刻になるまで待つ必要はありません。
可能であれば自治体、避難所、消防・救助機関などに、現在地、人数、水の残量、けが人や体調不良者の有無、移動できない理由を伝えます。
山間部や孤立集落、建物内への閉じ込めなどでは、「まだ少し水が残っているから」と救助要請を遅らせるより、通信手段が使えるうちに状況を伝えることが重要です。
携帯電話の電池が限られている場合は、必要な連絡と公式情報の確認を優先し、不要な通信を減らします。
## 判断に迷ったときの優先順位
安全な飲み水がない場面では、特殊なサバイバル技術を試すことより、危険の少ない選択肢を順番に使うことが基本です。
まず自分のいる場所の安全を確保し、自治体や水道事業者から水道の状況を確認します。そのうえで、未開封の備蓄水、行政の応急給水、購入できる飲料水など、安全性を判断しやすい水を優先します。
飲料水が限られるなら生活用水と分け、不必要な消費を減らします。それでも不足する見込みなら、危険な水源に手を出す前に避難や支援要請を検討します。
災害時には「何とか自力で水を作らなければならない」と考える必要はありません。水の汚染原因を個人が正確に見分けることは難しく、処理方法を間違えれば、かえって健康上の危険を増やすことがあります。
**安全確認 → 公的情報の確認 → 安全性の高い飲料水の確保 → 用途を分けて管理 → 不足する前に給水・避難・救助につながる**。この順序を基本にすることが、安全な飲み水を確保できない状況での現実的な対応です。