大きな出血を見つけたとき、まず何をするべきか
# 大きな出血を見つけたとき、まず何をするべきか
## 大きな出血では「傷を治す」より先に命を守る
事故や災害、野外活動中のけがで大量の出血が起きた場合、一般の人が現場で傷そのものを治療することはできません。しかし、救急隊や医療機関につながるまでの間に出血を抑えることは、命を守るための重要な応急手当になります。
日本赤十字社は、多量の出血に対する基本的な方法として、傷口をガーゼやハンカチなどで直接強く押さえる「直接圧迫止血法」を挙げています。まず直接圧迫を行い、その後は医師の診療につなげることが基本です。
重要なのは、特殊な道具や高度な技術を探すことではありません。
**安全を確認する、救助を要請する、出血している場所を直接圧迫する。**
大きな出血を前にしたときは、まずこの流れを思い出します。
## 最初に自分と周囲の安全を確認する
負傷者を見つけても、すぐに駆け寄ることが常に正解とは限りません。
交通事故なら走行中の車、災害現場なら倒壊物やガラス、野外なら落石や増水、作業現場なら機械や電気など、負傷者を傷つけた危険がまだ残っている可能性があります。
救助者まで負傷すると、救助できる人が減ってしまいます。まず周囲を見て、自分が安全に近づけるかを確認します。危険な場所から移動させる必要がある場合もありますが、負傷者を動かすこと自体にも危険があります。日本赤十字社も、傷病者の搬送には負担や危険が伴うため、状態や現場の状況を考えて行う必要があるとしています。
安全な場所で手当てできるなら、不必要に負傷者を動かさないことも重要です。
## 「大量かどうか」を正確に測ろうとしない
緊急時に「何ミリリットル出血したか」を判断する必要はありません。
血液が流れ続けている、短時間で衣服や地面が血で濡れていく、傷口から激しく出血しているなど、明らかに通常の小さな切り傷とは違う場合には、大きな出血として行動する方が安全です。
日本赤十字社によれば、成人では体重のおよそ8%に相当する血液が体内にあり、多量の血液を失うと生命に危険が及びます。子どもではより少ない出血でも危険になり得ます。
つまり、現場で重要なのは出血量を計算することではなく、**大量出血の可能性があるなら止血と救急要請を急ぐこと**です。
## 大きな出血なら119番通報につなげる
大量出血が疑われる場合は、応急手当だけで終わらせず、救急医療への接続を優先します。
周囲に人がいるなら、一人は119番通報、もう一人は止血というように役割を分けます。消防の通信指令員は、119番通報を受けた際に必要に応じて止血などの応急手当を口頭で案内する仕組みを持っています。
一人しかいない場合も、119番通報をしたうえで通信指令員の指示に従います。スマートフォンなどで両手を使える状態にできれば、通報を続けながら手当てを行いやすくなります。
「自分で何とかしてから救急車を呼ぼう」と考える必要はありません。
**救急要請と応急手当は並行して行うもの**です。
## 基本は傷口を直接、強く圧迫する
大量出血への一般的な初期対応の中心になるのが、直接圧迫止血です。
清潔なガーゼ、ハンカチ、タオルなどを出血している傷口に当て、その上から手でしっかり圧迫します。消防庁も、大出血では直接圧迫止血を基本とし、片手で止まらない場合には両手でしっかり圧迫する方法を案内しています。
ここで重要なのは、傷の周辺を何となく押すのではなく、**実際に出血している場所を押さえること**です。
圧迫しているのに血が出続ける場合、消防庁は、圧迫している位置が出血部位からずれているか、圧迫する力が弱い可能性を挙げています。
傷口を細かく観察したり、傷の種類を診断したりすることより、まず出血を抑えることが優先されます。
## 血液に直接触れない工夫をする
応急手当では負傷者だけでなく、救助者の安全も考えます。
血液を介した感染の危険を減らすため、可能であれば使い捨て手袋を使用します。手袋がない場合には、ビニール袋などで手を覆う方法もあります。日本赤十字社と消防庁はいずれも、止血時には血液へ直接触れないよう手袋やビニール袋などを利用することを勧めています。
ただし、感染予防用品を長時間探し回って重大な出血への対応が遅れるのも問題です。現場の状況と自分の安全を考えながら、利用できるものを使います。
## 深く刺さったものはむやみに抜かない
事故では、ナイフ、金属片、木の枝などが体に刺さったままになっていることがあります。
この場合、単純な切り傷と同じように考えてはいけません。
深く刺さった異物が血管を傷つけている場合、異物そのものが一時的に出血を抑えていることがあります。日本赤十字社の資料でも、深い刺し傷では刺さったものを自分で抜かず、抜くことで多量の出血が起こる可能性があるため、速やかに医療機関につなげるよう説明されています。
大きなものが深く刺さっている場合は、むやみに引き抜いたり押し込んだりせず、119番通報をして指示を受けます。
## 止血帯は「とりあえず縛る道具」ではない
大量出血という言葉から、腕や脚をひもで強く縛る方法を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、止血帯は通常の直接圧迫と同じ感覚で使うものではありません。
日本赤十字社では、止血帯止血法を、腕や脚からの激しい出血で直接圧迫止血でも効果が得られない場合などに使用する方法としています。同時に、神経などを傷める危険があるため、安全に実施できるよう十分に習熟しておく必要があるとしています。
特に、細いひもや針金などを自己流で強く巻く方法は避けます。消防庁の止血に関する口頭指導資料でも、細いひもや針金で手足を縛る方法は血管や神経を傷める危険があるため、指導しないとされています。
止血帯について知っておくこと自体は有用ですが、実際の使用方法は救命講習などで正しく学ぶのが適切です。一般的な場面では、まず直接圧迫と救急要請を優先します。
## 出血だけでなく意識と呼吸も見る
大量出血をしている人の状態は途中で変化することがあります。
話しかけても反応が鈍くなる、急に反応がなくなるなどの変化があれば、119番の通信指令員に伝えます。
反応がなく、普段どおりの呼吸もない場合には、出血への対応だけでなく心肺蘇生が必要になる可能性があります。消防庁は、普段どおりの呼吸がない、あるいは判断できない場合には胸骨圧迫を開始するよう案内しています。
救急隊が到着するまで、出血の状態だけを見続けるのではなく、意識や呼吸にも注意します。
## 体を冷やさず、できるだけ安静にする
大きなけがをした人を必要以上に歩かせたり座らせたりする必要はありません。安全な場所で、できるだけ安静にして救急隊を待ちます。
周囲が寒い場合には、毛布や上着などを使って体温が下がらないようにします。日本赤十字社は傷病者を保温する際、毛布などで全身を包み、地面からの冷えにも配慮するよう案内しています。
ただし、保温のために止血を中断したり、大きく体を動かしたりする必要はありません。優先順位は、生命に直結する問題から考えます。
## 「止まったように見える」ことをゴールにしない
圧迫によって出血が少なくなったとしても、深い傷や大きな血管の損傷が治ったわけではありません。
外から見える傷が小さくても、筋肉、腱、神経、血管などが傷ついていることがあります。深い刺し傷では、体内の損傷や異物が外見だけでは判断できない場合もあります。
大量に出血した、出血が止まりにくかった、深い傷がある、強い外力を受けたといった場合には、応急手当だけで済ませず医療につなげることが重要です。
## 覚えておく順番はシンプルでいい
大量出血の現場で、一般の人が複雑な処置をすべて覚えている必要はありません。
まず自分と周囲の安全を確認する。大きな出血なら119番通報につなげる。血液との接触をできる範囲で避けながら、ガーゼや布を傷口に当てて直接強く圧迫する。そして意識と呼吸の変化を見ながら救急隊を待つ。
これが基本です。
止血帯や特殊な外傷処置は、必要になる状況もあります。しかし、道具や技術を探すことに気を取られて、**直接圧迫や救急要請が遅れることの方が問題です**。
サバイバルで重要なのは、何でも自分だけで処置できることではありません。自分にできる応急手当を行いながら、できるだけ早く救急医療へ引き継ぐこともまた、重要な生存技術です。