大量出血があるときの初期対応と救急要請
# 大量出血があるときの初期対応と救急要請
## 大量出血では「止血」と「救急要請」を同時に進める
けがで大量の血が出ているとき、現場で最も重要なのは、傷をきれいに処置することではありません。**これ以上の出血をできるだけ減らし、できるだけ早く救急医療につなげること**です。
大量出血は短時間で生命に関わることがあります。日本赤十字社は、傷からの大出血では直ちに止血する必要があり、基本となる方法として直接圧迫止血法を示しています。
事故や災害の現場では、出血量を正確に測ることはできません。「何mL出たら救急車を呼ぶ」と考えるより、出血が激しい、圧迫しても止まりにくい、衣服や周囲が急速に血で濡れている、本人の反応が悪くなっている、といった状況なら重い出血を疑い、119番通報を優先します。
一人で対応している場合でも、可能なら携帯電話をスピーカー通話にして119番へ連絡しながら止血します。複数人がいるなら、一人が通報し、一人が圧迫を続けるなど役割を分けるとよいでしょう。
## まず自分と傷病者の安全を確認する
負傷者を見つけると、すぐ駆け寄りたくなります。しかし、交通事故、倒壊した建物、火災、落石、機械、刃物などが関係する現場では、救助者まで負傷すると対応できる人が減ってしまいます。
最初に周囲を見て、近づいても大丈夫か確認します。危険な場所から離れる必要がある場合でも、無理な救出によって自分まで危険にさらされる状況では、消防など専門の救助を要請します。
また、他人の血液には直接触れないことが基本です。使い捨て手袋があれば使用し、なければ清潔なビニール袋などで手を覆う方法があります。消防庁や日本赤十字社も、止血時には手袋やビニール袋などを利用して感染予防を行うよう案内しています。
ただし、感染防護用品を探して長時間止血を遅らせるのも適切ではありません。手元にあるものを利用しながら、救急要請と止血を速やかに進めます。
## 大量出血を疑ったら119番へ通報する
傷が深そうに見えるかどうかだけで重症度を判断することはできません。小さく見える傷でも深部の血管が損傷している可能性がありますし、反対に見た目が派手でも比較的表面的な出血の場合があります。
そのため、
- 出血が激しく続いている
- 圧迫しても出血がおさまらない
- 血液で衣服や布が急速に濡れる
- 大きな事故や転落などによるけがである
- 顔色が悪い、冷や汗がある、ぐったりしている
- 反応が鈍い、意識状態がおかしい
といった状況では、自分で重症度を確定しようとせず119番へ通報します。
通報時には、場所、何が起きたか、傷病者のおおよその年齢、意識や呼吸の状態、大量の出血があることなどを伝えます。通信指令員から応急手当について指示された場合は、その指示に従います。
「病院まで自分の車で運んだほうが早いのでは」と考えることもありますが、重い出血では途中で状態が急変する可能性があります。救急車が必要と判断される状況では、現場で止血を続けながら救急隊を待つことが重要です。
## 基本は傷口を直接圧迫する
大量出血に対する一般の人の基本的な応急手当は、**直接圧迫止血**です。
清潔なガーゼや布、ハンカチなどを出血している場所に当て、その上から手でしっかり押さえます。片手だけでは十分に圧迫できない場合には、両手を使って圧迫します。消防庁も、大出血では直接圧迫止血を行い、片手で止まらなければ両手で体重をかけるように圧迫する方法を示しています。
ここで重要なのは、傷を見るために何度も布を持ち上げたり、数秒押しただけでやめたりしないことです。救急隊へ引き継ぐまで、必要な圧迫を継続します。
大量の血を見ると、傷口を洗浄したり消毒したりしたくなるかもしれません。しかし、激しく出血している段階では、傷をきれいにすることより止血が優先です。砂や汚れを完全に取り除こうとして時間を使う必要はありません。
また、傷に深く刺さっている物体がある場合、それを現場で無理に引き抜くと出血が悪化する可能性があります。むやみに抜かず、119番の指示を受けながら対応します。
## 「押さえているのに止まらない」ときに確認すること
圧迫しているつもりでも出血が続く場合、圧迫している場所が傷口からずれていたり、力が不足していたりすることがあります。消防庁も、圧迫しても出血がおさまらない場合には、圧迫位置のずれや圧迫する力の不足が考えられるとしています。
まず傷の位置を確認し、出血している場所を確実に覆って圧迫します。
一方で、「何とか自分だけで完全に止めなければならない」と考える必要はありません。直接圧迫を続けても激しい出血が止まらない状況こそ、救急隊による処置や医療機関での治療が必要です。
応急手当の目的は、病院で行う治療を現場で再現することではありません。救急隊が到着するまでの悪化をできるだけ防ぐことです。
## 止血帯は直接圧迫とは別の手技
腕や脚からの非常に激しい出血では、止血帯が使用されることがあります。日本赤十字社も、直接圧迫止血で効果が得られない激しい四肢の出血に対する方法として止血帯止血法を挙げています。一方で、止血帯には神経などを傷める危険性があり、安全かつ適切に実施できるよう十分に習熟する必要があるとしています。
そのため、この記事だけを読んで即席の材料による高度な止血法を試すことは勧められません。
市販の止血帯を救急用品として備えるのであれば、購入しただけで安心するのではなく、救命講習などで使用方法を学び、製品の説明に従って使用できるようにしておくことが重要です。
実際の緊急時には、119番の通信指令員や救急隊から具体的な指示を受けられる場合があります。高度な手技を自己流で追加するより、まず通報と直接圧迫を確実に行うことが基本です。
## 出血以外の状態も観察する
大量の血液を失うと、体全体へ十分な血液を送れなくなり、状態が急激に悪化することがあります。
止血を続けながら、
- 呼びかけに普通に答えるか
- 呼吸の状態に変化がないか
- 顔色が急に悪くなっていないか
- 冷や汗が出ていないか
- ぐったりしていないか
などを観察します。
傷病者は必要以上に歩かせたり動かしたりせず、できるだけ安静にします。寒い環境では毛布や衣類などを利用して体が冷えないようにします。
重傷者には、自己判断で食べ物や飲み物を与えるより、救急隊の到着を待ちます。意識状態が悪化している人に飲ませれば、うまく飲み込めない危険もあります。
状態が変化した場合は119番の通信指令員へ伝えます。
## 反応や呼吸がおかしくなった場合
大量出血のある人が突然反応しなくなった場合には、出血だけを見続けず、呼吸も確認する必要があります。
呼びかけても反応がなく、普段どおりの呼吸をしていない場合は、心停止の可能性があります。その場合には119番の通信指令員の指示を受け、胸骨圧迫やAEDを含む一次救命処置へ移ります。政府広報でも、反応がなく、普段どおりの呼吸がない、または判断できない場合には胸骨圧迫を開始する手順が示されています。
一人しかいない場合には、止血と心肺蘇生を同時に完全に行うことは困難です。こうした状況では、電話を切らず通信指令員の指示を受けることが特に重要になります。周囲に人がいれば助けを求め、通報、AEDの確保、止血などを分担します。
## 災害時でも「自力で何とかする」ことを目的にしない
大規模災害や山間部では、救急隊がすぐ到着できない場合もあります。それでも基本的な考え方は変わりません。
安全な場所を確保し、可能な通信手段で救助を要請し、直接圧迫を続け、傷病者の状態を観察します。圏外だからといって、出血している人を長距離歩かせることが常に正しいわけでもありません。二次災害や転落など新たな危険がある場合には、状況に応じた判断が必要です。
遭難時であれば携帯電話、衛星通信機器、非常通報機能など、利用可能な通信手段を試します。第三者に救助要請を任せられるなら、自分は止血を継続するという分担も考えられます。
重要なのは、応急手当を「医療を使わず自力で解決する技術」と考えないことです。応急手当は、専門的な治療へつなぐまでの時間を支えるためのものです。
## 平時の救命講習が役に立つ
大量出血の場面では、知識として「押さえる」と知っていても、実際の血液量や傷の状態に動揺する可能性があります。
消防機関や日本赤十字社などが行う救命・救急法の講習では、心肺蘇生だけでなく、止血などの応急手当を実際に練習できる場合があります。止血帯など高度な器具を備えるのであれば、なおさら実技で扱い方を学んでおく意味があります。
緊急時に覚えておきたい流れは複雑ではありません。
**現場の安全を確認する。大量出血なら119番へ通報する。血液への接触をできるだけ避けながら、傷口を直接、しっかり圧迫する。そして救急隊へ引き継ぐまで状態を観察する。**
大量出血では、特殊な技術を数多く覚えていることより、この基本行動を迷わず開始し、専門的な救助への接続を遅らせないことが重要です。