人が突然倒れたらどうする?意識がない人への初動
# 人が突然倒れたらどうする?意識がない人への初動
## 最初にするのは「原因探し」ではなく安全確認
目の前で人が突然倒れ、呼びかけても反応しない。そんな場面では、脳卒中、心臓の異常、低血糖、けいれん、窒息、外傷など、さまざまな原因が考えられます。しかし一般の人がその場で原因を特定しようとする必要はありません。
優先すべきなのは、**自分と傷病者の安全を確保し、反応と呼吸を確認し、早く119番通報とAEDの手配につなげること**です。消防庁や日本赤十字社が示す一次救命処置も、安全確認から始まり、反応の確認、119番通報とAEDの手配、呼吸の確認へ進みます。
交通事故の現場なら走行中の車、火災なら煙や炎、災害現場なら落下物や倒壊、屋外なら崖や水辺など、救助する側にも危険がないかを先に確認します。
危険な場所に無理に入って救助者まで負傷すると、状況はさらに悪化します。安全を確保できない場合は、自分で危険区域へ入るのではなく、119番通報などを通じて消防や救急などの専門機関につなげます。
## 反応があるかを確認する
安全を確認できたら、倒れている人に近づき、声をかけます。
「大丈夫ですか」「わかりますか」などと呼びかけ、反応があるかを見ます。完全に受け答えできなくても、声に反応して動く、目を開けるなどの反応がある場合があります。
一方、呼びかけても反応がない、あるいは反応があるのか判断できない場合は、緊急性が高いと考えて次の行動へ進みます。
この段階で長時間にわたって意識の程度を調べたり、病名を推測したりする必要はありません。意識を失った原因が何であっても、呼吸や循環が停止していれば、原因の特定より救命処置が優先されるからです。
## 反応がなければ119番通報とAEDの手配
反応がなければ、大声で周囲に助けを求めます。
人がいる場合は、「119番通報をお願いします」「AEDを持ってきてください」と具体的に依頼すると役割が伝わりやすくなります。消防庁も、反応がない場合には助けを呼び、119番通報とAEDの手配につなげる流れを示しています。
一人しかいない場合でも、可能な限り早く119番へ通報します。スマートフォンのスピーカー機能などを利用できれば、通信指令員と話しながら傷病者のそばで行動できます。
119番では、場所、傷病者の状態、呼吸の有無などを質問されることがあります。すべてを完璧に説明する必要はありません。分からないことは「分からない」と答え、通信指令員の指示を受けながら行動します。
「もう少し様子を見よう」「家族を探してから連絡しよう」といった理由で通報を遅らせないことが重要です。
## 呼吸は短時間で確認する
次に、傷病者が**普段どおりの呼吸をしているか**を確認します。
胸や腹が上下しているかを見ます。消防庁では、呼吸の確認に10秒以上かけず、普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫を開始するとしています。呼吸があるか判断できない場合も、胸骨圧迫を開始することが勧められています。
注意したいのが、心停止直後に見られることがある、しゃくり上げるような途切れ途切れの呼吸です。
口が動いている、時々息をしているように見えるからといって、正常な呼吸とは限りません。このような異常な呼吸は「普段どおりの呼吸」とは扱わず、心肺蘇生を開始します。
一般の人が脈を探し続ける必要はありません。呼吸の判断に時間を使いすぎず、迷った場合には胸骨圧迫へ進むことが重要です。
## 普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫
反応がなく、普段どおりの呼吸もない、あるいは呼吸があるか分からない場合は、胸骨圧迫を始めます。
成人では、胸の中央を目安に両手を重ね、胸が約5cm沈む程度まで強く圧迫します。テンポは1分間に100~120回が目安です。圧迫した後には胸が元の位置に戻るようにし、できるだけ中断を少なくして続けます。
胸骨圧迫は、実際に人形を使った講習を受けると、文章を読むだけでは分かりにくい力加減や姿勢を体験できます。しかし緊急時に「やり方に自信がないから何もしない」と考える必要はありません。
119番の通信指令員から方法を教えてもらえることがあります。指示を聞きながら実施してください。
人工呼吸の訓練を受けていて、実施できる場合には、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を組み合わせる方法があります。一方、人工呼吸ができない、方法が分からない、感染などの理由でためらわれる場合には、胸骨圧迫を続けることが重要です。政府広報や消防機関も、心肺蘇生とAEDについて一般市民向けの学習情報を提供しています。
乳児や小児では成人と方法が異なる部分があります。子どもに対する心肺蘇生を含め、実技を伴う救命講習で学んでおくと、緊急時により対応しやすくなります。
## AEDが届いたらすぐに使う
AEDは、心停止した人に電気ショックが必要かどうかを機器が解析し、必要な場合にショックを行うための装置です。
AEDが届いたら電源を入れ、音声や画面の指示に従います。電極パッドに貼る位置が図示されているため、それに従って傷病者の胸に貼ります。
心電図を解析している間や電気ショックを行うときは、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
AEDが「ショックは不要」と判断した場合も、それだけで傷病者が回復したという意味ではありません。反応や正常な呼吸が戻っていなければ、機器の指示に従って胸骨圧迫を再開します。
AEDを使う資格がないから触ってはいけない、と考える必要はありません。一般市民が使用することを前提として設計されており、基本的には機器の音声指示に従って操作できます。
## 呼吸があるが意識が戻らない場合
反応はないものの、明らかに普段どおりの呼吸をしている場合には、呼吸状態を継続して観察します。
傷病者を仰向けのままにしておくと、舌や吐物などによって気道が妨げられる可能性があります。日本赤十字社の一次救命処置では、正常な呼吸がある場合に気道を確保し、必要に応じて回復体位にして観察を続ける方法が示されています。
ただし、転落、交通事故、強い衝撃などによる頭部や首、脊椎の損傷が疑われる場合には、不必要に身体を動かさない配慮も必要です。
一方で、火災、車両接近、水没など、その場所にいること自体が生命の危険になる場合は安全な場所への移動が優先されます。現場の条件によって判断は変わるため、可能であれば119番の通信指令員の指示を受けます。
## 意識を戻そうとして無理なことをしない
意識がない人に対して、頬を強くたたく、水を飲ませる、無理に立たせるといった行動は避けます。
飲み物や食べ物、薬を口から与えることも適切ではありません。意識が低下していると正常に飲み込めず、気道へ入る危険があるためです。
けいれんしている場合も、無理に押さえつけたり、口の中へ物を入れたりしません。周囲の危険物から守り、けいれんが落ち着いた後は反応と呼吸を確認し、必要な救命処置へつなげます。
倒れた理由を本人の持病だと決めつけることも避けます。「以前にも同じことがあった」と周囲の人が話していても、今回も同じ原因とは限りません。
## 救急隊が来るまで観察と救命処置を続ける
胸骨圧迫を開始した場合は、救急隊などに引き継ぐまで、あるいは傷病者に明らかな反応や普段どおりの呼吸が戻るまで続けます。
複数人がいる場合は、疲労によって圧迫が弱くならないよう交代することもできます。ただし交代のために長く中断しないことが大切です。
一方、正常な呼吸が確認できている場合でも、救急隊が到着するまで状態を観察します。呼吸は途中で停止する可能性があります。先ほど呼吸していたから大丈夫だと考えず、変化があれば再び確認し、必要なら胸骨圧迫を始めます。
傷病者の持病、服用薬、倒れる直前の様子、倒れた時刻などが分かれば、救急隊へ伝えます。ただし、その情報を集めるために119番通報や救命処置を遅らせてはいけません。
## 「完璧に判断する」より救急医療につなげる
意識を失った人への初動では、難しい診断能力よりも、行動の順序を覚えておくことが役立ちます。
**周囲の安全を確認する。反応を見る。反応がなければ119番通報とAEDを手配する。普段どおりの呼吸がなければ、または判断できなければ胸骨圧迫を始める。AEDが届けば使用する。**
この流れを知っているだけでも、突然の事態で何から始めればよいかを整理しやすくなります。
ただし、文章や動画を一度見ただけで心肺蘇生を十分に習得できるわけではありません。消防庁は一般市民向けの応急手当WEB講習を公開しており、日本赤十字社や各地域の消防機関などでも救命講習が行われています。
胸骨圧迫の姿勢や力加減、AEDの扱いは、訓練用人形やAEDトレーナーを実際に使うことで理解しやすくなります。
サバイバルというと、限られた環境で自力で問題を解決する技術を想像しがちです。しかし現代の救命で重要なのは、一人ですべてを解決することではありません。
目の前で人が倒れたときには、救急医療へできるだけ早くつなぎ、その到着まで生命を支える。そのための最初の行動こそが、一般市民に求められる重要な救命行動です。